神様の領域三浦喜代子

歌が生まれるクリスマス

 賛美歌『きよしこの夜』を知らない人はいない。この歌の誕生物語もまた有名である。歌は、オーストリヤの北西、オーベンドルフの寒村にある小さな教会で生まれた。

時は二〇〇年ほど前の雪深い夜のこと、予想外のことが起きてムーア先生はあわてていた。明日はクリスマス・イブだというのにオルガンが鳴らないのだ。もう、修理はまにあわない。ムーア先生は音楽教師のグルーバーを呼ぶと、昨夜作ったばかりの詩を広げた。霊想満ちる詩であった。グルーバーはギターを抱くと、まるで旧知の曲のように爪弾いた。  こうして、不朽の名曲は沈黙のオルガンのかたわらで産声をあげた。

ご降誕に相前後して、二千年前のユダヤには三つの賛美が生まれている。  第一は言うまでもなくマリヤの賛歌(マグニフィカート)である。乙女マリヤは、天使ガブリエルの受胎告知に信仰の従順で応答した。

ところが祭司夫人は『私の主の母がこられるとは、なんということでしょう。胎内で子どもが喜んでおどりました』と感嘆の声をあげて若き田舎娘マリヤを抱きしめた。謙遜と柔和が匂いたつような歓迎ぶりにマリヤの張りつめた心がやわらかくなった。なによりも命を宿す女性の豊かさと美しさに胸がふるえた。  ふいに歓喜が吹き上げて、マリヤは高らかに歌声をあげた。

わがたましいは主をあがめ
わが霊は、救い主なる神を喜びたたえます。

こうして、不滅の賛美はエリサベツの笑みのかたわらで誕生した。 歌声は老祭司ザカリヤにも聞こえたであろう。老いた妻の懐妊が信じられなくて、神から口を閉ざされ、深い沈黙の中にいたのだ。

愛息が生まれると、たちまち唇は解け、ザカリヤはマリヤに劣らず歌いにうたった。後世、ドミニクスと呼ばれる二つ目のクリスマス賛歌である。

三つ目は、赤子イエスが産声をあげ、飼葉おけにねむるころ、ベツレヘム郊外の野原に野宿する羊飼いたちが聞いた、天使の歌声グローリヤである。世の底辺を這うように生きていた彼らは、星々のささやきにまさる天群のコーラスに歓喜した。彼らはそろってご降誕の現場に駆けつけた。 三つの賛歌はイエス様の子守歌になったにちがいない。

今年のクリスマスには、信仰の先人たちにならって新しい歌をうたいたい。 世の理不尽な沈黙やわが心の闇を裂く、新しい歌をうたいたい。

作  者       三浦喜代子
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神様の領域きよしこの夜

夜のクリスマス

あなたがたは、選ばれた民、王の系統を引く祭司、聖なる国民、神のものとなった民です。それは、あなたがたを暗闇の中から驚くべき光の中へと招き入れてくださった方の力ある業を、あなたがたが広く伝えるためなのです。 ペトロの手紙Ⅰ 2:9節

イエスは羊飼いたちが「夜通し羊の群れの番をして(ルカ2:8)」いるあいだに生れました。そしてイエスが来られた世界は、まさにその夜の暗闇のようでした。ローマでは、冷酷な軍政による統治者が皇帝になっていました。パレスチナの王へロデは残酷でした。ヨセフとマリアは住民登録をし、独裁者に税金を納めるためにベツレヘムやってきました。クリスマスの歌は優しく穏やかなものが多く、私たちはイエスがお生まれになった過酷な世界をつい忘れてしまいがちです。

私たちのいる現代の世界も、戦争、政治的紛争、暴風雨、地震、津波、飢餓、病気、貧困、無知、人種差別などに苦しんでいます。私たちもいずれは愛する人を亡くし、失意に暮れるかみしれません。死や心の病気、家庭の不和、孤独、自殺などは、クリスマスに高らかに宣言された喜びをかき消してしまいます。私たち自身の罪の闇も、耐えられないほどの重荷になります。

しかし、、この世界が暗く悩みに満ちていたからこそ、イエスは来られたのです。その光と愛は闇を貫ます。もしイエスに従うならば、私たちは「命の光を持つ」(ヨハネ8;12)のです。

祈祷:神様、イエス誕生の時に御使いたちが宣言した地上の平和が、この世界と私たちの人生の平和であることを忘れないようお助け下さい。そのことが、私たちが励むよう命じでおられるあなたの御心です。アーメン。

今日の黙想:キリストの光を暗闇に携えて行くために、どうしたら良いでしょうか。

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